【読書感想文】西加奈子「サラバ!」の感想
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西 加奈子「サラバ!」の感想をご紹介します。
※本内容は一部ネタバレも含んでいるので、ご注意ください。
これが西加奈子ワールドか!
個人的にはすごい気になっていたので、上下巻と非常に読みごたえがある内容でしたが、チャレンジしてみました。
「僕はこの世界に、左足から登場した。」ヵら始まる書き出しは、伊坂幸太郎の「重力ピエロ」を彷彿としました。主人公の男性を焦点とした自伝的な書き方で、主人公の家族や友人とのエピソードや感情が描写されています。本作品では主人公の姉の入信や幼少期に過ごしたエジプトなど「宗教」に関する内容を扱っています。少し重くなりがちな宗教という内容を、主人公の目線や体験を通すことでライトな感じにしていると思います。
作中の主人公は恵まれた容姿で友人関係は不自由しない生活を送っていましたが、加齢に伴う頭髪の悩みにより、自分には大したスキルもなく、友人関係もほとんどないことを嘆きます。しかし、最後には姉からの助言である「信じるもの」を探し求め、幼少期を過ごしたエジプトに行き見つける・・・読者にも問いかけるメッセージ性もあり、読了後は何か意欲がわいてくるような小説だと思います。
主人公の語り口や感情に共感できるかが分かれ目
この本は、合う人と合わない人が分かれるタイプだと思います。
主人公の自伝的な読者に語り掛ける一人称の文体、姉を避けようとしながらも高い顔面偏差値で周囲を引き付ける魅力を持つ主人公の性格など、これらに合う合わないが出てしまうかと思います。全く種類が異なる作品ですが、佐藤 多佳子さんの「一瞬の風になれ」も主人公の語り口調であったため、この作品が抵抗なく読めるのであれば問題ないのかなーと思います。
主人公が大学生になった時のモテる自慢は、日陰を歩いてきた私にとっては少し鼻につくような内容でした(笑)。これも会う合わないがあると思います。ですがその後、主人公も年を重ねるにつれて、容姿や才能だけで戦えなくなり、社会から取り残される描写には背徳感を感じます。